2019-01-01から1年間の記事一覧

ユーレイヤーライ

ここ三日間、店員さん以外の人と言葉を交わさなかった。 発した言葉は、 「84円切手ください。」 「袋いらないです。」 「ウィンナーコーヒーを。」 「ごちそうさまです。」 「ありがとうございます。」 こんなもんだった。 しかし、それ以外の時間が静か…

性差

自分に女という機能が備わっていることが、時に悲しく、不必要に感じる。 小学生の頃、自分の体は平坦なままであれと願ったし、見ず知らずの人間から女であるという判断だけで触られたり、撮られたり、そういうことは懲り懲りだった。被害者の意識を持たねば…

ひとり/ふたり

あ、あの人私の方を見ているな ということを誰かの目を見ながら思った時、その瞬間ふたりは、見つめ合っている。 そのことに気がついた保育園時代、両想いという奇跡をすこし身近に感じた。案外認識するより前に、その状態は訪れていたりするのかも知れない…

とうめい

涙と、愛というものは、強く結びついている。 すべてに愛で応えようとすると、毎日がぼろぼろになる。 止まらない涙は、溢れた愛の副産物なのかも知れない。 涙は自分の頬を伝うから、優しくなぞってくれるから、その感覚につい身を委ねてしまう。 未来に期…

音のない会話

もう二年半も前のことだ。 ようやく陽射しに温度が感じられるようになった季節。代官山。平日。 軽やかなビジネス人たちがまばらに通勤する時間帯。 わたしはカフェの開店準備をしながら、ふと大きな窓ガラスの外を見た。 すらっとした二人の女性が、坂にな…

シン・ニンゲン

誕生日も、新年も、新学期も、新年号も、本当は何も変わらない。だって日々は地続きだ。 ただ、飛び越える意識を持つかどうか。 something newを求めるか否か。 “vision を持ちなさい” 下北沢の魔女は中学生の私にそう言った。10年後、20年後の自分がどのよ…

緑喪失記

あまりにも、突然だった。 こういうことがあると、何かに安心を覚えることがほんとうにこわくなる。 その度、心を空っぽにする。 空っぽのまんま、涙が流れる。流れるがまま、抑えることができない。 日々の無意識下に確かにあった平穏な一部が、目の前で、…

ふたごの気配

子どものふたごが、ふたり一緒にベビーカーから顔を出していたり、同じ服を着て横並びに歩いていたりする光景は良く目にするけれど、年齢層が上がるにつれ、ふたごが揃って街を歩く姿を見かける頻度は少ない。 中華街で柱にもたれて肉まんを食べていた。 す…

深夜のブランコ、真夏の熱帯魚

夏の夜が恋しい。 あの光るうちわをはやく携えたい。 白いワンピースに空気を孕ませて、軽やかに夜道を歩きたい。 暑さでどうにも寝付けない夜、ブランコの揺れに身を預けたい。 ちゃぶ台に上がった冷やし中華を愛でたい。 小さな氷を舐めたまま畳に寝転がり…

丘の上 陽のあたる部屋

The VaselinesのSon of a Gun 最近はカヒミカリィのこの曲のカバーをずっと聴いてる。 キュートがあり余っている! Son of a Gun Swing swing up and downTurn turn turn aroundRound round around and about andOver againGun gun son of a gunYou are the …

帰れない二人

彼は動物的で、詩的で、あたたかな血の通う人。 わたしにとっては、優しく拾って包んでくれるスーパーマンでもあり、同じ星からやってきた同胞のような気持ちも抱く。 彼とは異性である以前に、人間として、出会えたことがとても嬉しい。 午前四時に家を出て…

とある行為の目撃者

四年生になった。 八時半 久々 早朝の西武国分寺線。 向かいの椅子のぎりぎりひとり分空いた隙間に、大きな体をねじ込んでいるひとがいたから注目した。 彼は座るやいなや、暖かそうなフリースを脱ぎ、膝に丸めて置き、手に持っていた750mlペットボトルのコ…

靄靄

高校生の時、愛を撒くのが怖くなかった。 減るものだという意識も無かったし、撒いたら撒いたで反響があるのも感じていたから。 それがどうだ。21歳の自分はひとりの人間を愛することをこんなにも恐れてる。それがはね返されたとき、自分が繕いようもないほ…

シベリア

しみずやのおじいちゃんが、きのうフランスパンを焦がしたらしい。あれほどベテランで、毎日毎日パンを焼いていても、うっかりすることがあるんだね。その話を耳にしたわたしはなんだかすごくほっとした。 わたしの前に並んでいたマダムが、シベリヤちょうだ…

ばったり三昧

湛えての上映を終えた次の日。 T氏のお誘いを受けて、川合さんと奇奇さんとジブリ美術館に行った。宮崎駿監督が二年間かけた15分間のCGアニメーション、毛虫のボロを見た。心くすぐられる、とってもキュートなボロ。ふざけたタモリさんの声だけの音響。小さ…