ふたごの気配
子どものふたごが、ふたり一緒にベビーカーから顔を出していたり、同じ服を着て横並びに歩いていたりする光景は良く目にするけれど、年齢層が上がるにつれ、ふたごが揃って街を歩く姿を見かける頻度は少ない。
中華街で柱にもたれて肉まんを食べていた。
するとすぐ後ろから、少ししわがれた男性の声が聞こえた。
「ここすごい並んでるなぁ。なんの店だ?」
「あぁ、小籠包の店だよ」
応えた声に違和感を感じた。その一つ前に発せられた声とほとんど同じだった。
振り返る間もなく、ソフトクリームを舐める、グレーヘアの男性の顔が目に飛び込んた。そして流れるように、もひとつ同じ顔。
先ほどの声の違和感がすっと解決した。
ぴったんこの、背丈やすらっとした体格は、彼らがふたごであるれっきとした証拠だが、なんたってそれを確信したのは、ふたりの着ていたシャツを見たときだった。
ひとりは5cm幅、もうひとりはギンガムの、チェックのシャツを着ていた。色はどちらもうすい赤色だった。
わざわざ口裏合わせた訳もなかろう。朝、服を選ぶ瞬間に、なんとなく通じてしまったのだろうか。
ソフトクリームを舐めていた彼はギンガムのシャツをイン。もうひとりのキャップを被った彼は5cm幅のチェックシャツをアウト。
その着こなしの絶妙な違いが、ふたりの歩んできた日々の違いを表しているように感じた。
それは無論、当たり前のことなんだけれど、着るものまで一緒くたにまとめられてしまう幼きふたごたちの面影を見たようで、なんだか不思議な気持ちになった。
にしても、ソフトクリームをぺろぺろ舐めながら連れ立って歩くおじさんてのはかわいげがあるもんだったなあ。