とある行為の目撃者

 

四年生になった。

八時半 久々 早朝の西武国分寺線

向かいの椅子のぎりぎりひとり分空いた隙間に、大きな体をねじ込んでいるひとがいたから注目した。

彼は座るやいなや、暖かそうなフリースを脱ぎ、膝に丸めて置き、手に持っていた750mlペットボトルのコカコーラを開けた。

幸せそうに一口飲んだ。

 

それからリュックサックを開け、手のひらサイズの、うす汚れた、ミッフィーちゃんを掬い上げた。彼は再びコカコーラのキャップを開けると、ミッフィーちゃんの口元にボトルの口をあて、ゆっくりと慎重に、傾けた。

コーラ色の液体がほんのすこしだけミッフィーちゃんの口元に触れた。瞬間すぐに、ボトルを直した。

彼は大事そうにミッフィーちゃんを撫でると、リュックサックにしまった。

 

ぬいぐるみが布でできていて、布が液体をはじかず、じんわりと吸収することができるから、本当に良かったと思った。