2019-09-27 音のない会話 もう二年半も前のことだ。 ようやく陽射しに温度が感じられるようになった季節。代官山。平日。 軽やかなビジネス人たちがまばらに通勤する時間帯。 わたしはカフェの開店準備をしながら、ふと大きな窓ガラスの外を見た。 すらっとした二人の女性が、坂になっている通りの道をとんとん下りながら、話に花を咲かせていた。 表情も豊かに、軽やかに歩いていた。 すべてが、手話による会話だった。 朝の光がきらきらと道に反射し、スクリーンのようなガラス越しにうつるふたりを、なぜだか時折思い出す。