ハロウィンに風邪をひいてしまう人

 

今日は10月最後の日。

 

高校時代はこの日はもうお祭り騒ぎで、原宿のバイト先に仮装した友たちがやって来たり、予備校で慎ましく仮装をしてから渋谷に繰り出したり、街全体がお祭りムードだと思ってた。

大学に入ってからは芸祭といつも被っていたから、それはそれでお祭り騒ぎ。

ハロウィンのためではないけれど、まわりも自分も、みんな燃え尽きていた。

 

だから、ハロウィンの日の夕方に薬局から具合悪そうに出てきたマスク顔の男の人を見かけるということは、思い返せばここ5年くらいまず有り得ないんだろうなと、ふと思いついた。

それと同時に、ハロウィンの日に風邪をひいてる人を、なぜだかとても愛おしく感じた。

街全体の浮かれ騒ぎの中、彼はそれどころでない状況をひとり抱えている。あの眉間にしわを寄せた表情と、ふらふらとした足取り、ジャージにパーカーという、外出着になってしまった部屋着姿。あぁ、彼の世界は深刻だ。わたしには彼が持っていたあの薬がよく効きますように、と祈ってみることしかできなかった。眉間にしわを寄せた瞬間の目撃者になることで、その痛みが少しでも軽減されるシステムなら、あの時の自分はごく僅かでも人の役に立てたんだけどな。